おはようございます。
早朝から沖縄都市モノレールで西側の終着駅「那覇空港」駅へやってきました。
実は,この駅も,2003年の沖縄都市モノレール線の開業にともない,長崎県のたびら平戸口駅に代わって,「日本最西端」の駅となりました。そして,なんと昨日訪れた「赤嶺」駅はこの「那覇空港」駅の次駅なので,日本最西端と最南端の駅が隣り合っているわけです。
地理講師というのは,いちばん“端っこ”まで行ってみたいという衝動が強いため,当然のごとく記念撮影!
那覇空港駅にやってきたのは,最西端駅探訪だけの目的ではなく,フライトのためです。
小さいプロペラ機に乗るのは,ひさびさです。
目的地は「南大東島」。
地図の真ん中あたりにある面積約31㎢,一周約21kmの小さな島で,典型的な隆起珊瑚礁(環礁)です。約4,800万年前にニューギニア島付近でできた火山島に珊瑚礁が形成され,プレート移動によって現在地に至りました。
われわれ地理講師でありながら,南大東島は今回が初上陸です。
那覇空港から1時間弱,実質的なフライト時間は40分程度でしょうか,「北大東島」が見えてきました!
南大東島の北約12kmに浮かぶ兄弟のような島で,面積は南大東島の3分の1程度とさらに小さい島です。スケジュール的に船便がないため,今回は残念ながら訪れることができませんが,いずれは行ってみたいですね。
なお,大東諸島にはもうひとつ,南大東島の南約160km離れたところに「沖大東島(おきだいとうじま)」がありますが,現在は無人島となっています。
つづいて,「南大東島」が近づいてきました!
低空から見ると,隆起珊瑚礁(環礁)であることがよくわかります。全体としては低平ですが,外周部に炭酸カルシウム(石灰石)の岩が取り囲みやや標高が高くなっています。
いよいよ着陸です!
南大東島に上陸しました。
空港からは自動車で,実質的には島唯一の集落である「在所」へ向かいます。
日本でありながら,海外のような景観が広がっています。
沖縄入りした昨日から,スギ花粉症の症状はなくなりました。
空港から自動車で10分弱,宿泊場所の「月桃 ムーンピーチ」に到着。
ここで2泊します。
レンタカーも借りられます。
共用トイレ,共用シャワー,部屋の壁はブロック塀むき出しで,離島感たっぷりです。
ただ,エアコン,冷蔵庫,テレビ,ポットなど最低限の設備はちゃんと整っています。Wi-Fiも使えます。
近所の商店で使える食事券1,600円分が付いて1泊7,600円。
昨夜は那覇の2,480円のドミトリーでしたので,とても豪華な宿泊施設です。
早速,自動車に乗って,島内の探索に出かけます!
環礁が隆起した島なので,周囲の海岸部はすべて石灰岩からなる高まりがあるため,港に出る道路はこのような切通しになっています。
南岸の亀池港。
南大東港は,西港,北港,亀池港の3港区あり,通常は西港にフェリーが発着していますが,荒天の際には北港やこの亀池港が補完的に使用されるます。
海岸が急峻で防波堤などの設置が難しいため,船舶は岸壁から少し離れた海上に係留し,物資や旅客はクレーンで積み下ろしします。
港の地面には,島から運び出す「砂糖」の表示があります。
島の南部には,島全体を一望できる「日の丸山展望台」があります。
サトウキビ畑が広がります。中央部には100以上の淡水湖沼があり,飲料水が得られるためヒトが定住できる島となりました。
孤島では飲料水確保は最も大切。どころどころに貯水施設がみられます。
なんと,海水を淡水に変える「淡水化プラント」も稼働しています。
真ん中の青い屋根の建物のなかに装置があります。
農業はサトウキビの生産が中心。
畑の土壌は赤みが強い色です。
珊瑚礁ですので石灰岩が風化して生成した「テラロッサ」といってよいでしょう。
サトウキビ以外には,カボチャ,トウモロコシなどの生産が行われるほか,コンテナ型の野菜水耕栽培の工場もあります。
パパイヤがつくられているところも,島内に点在しています。
努力は必ずしも実りませんが,パパイヤは実りに実っています。
現在,ちょうどサトウキビ収穫の最盛期にあたり,ハーベスターを使った収穫作業があちらこちらで行われていました。
収穫されたサトウキビの茎の部分は,トラックに満載され,島内の製糖工場へ運び込まれます。
さて,南大東島滞在初日の午前中から,早くもハイライトへ!
「シュガートレイン」!!!
大東糖業南大東事業所の私設鉄道で,サトウキビや砂糖の運搬用として1983年まで島内で運行されていました。
「ふるさと文化センター」の隣地に,蒸気機関車と復元された客車,ディーゼル機関車と貨車保存されていますが,ただ,だいぶん傷んでいますね。
トラック輸送が行われる以前は,この貨車にサトウキビの茎の部分を積載し,運搬していたのでしょう。客車もあることから,旅客輸送も不定期で行われていたようです。
大東亜戦争(第二次世界大戦)後,沖縄県の鉄道は消滅したといわれますが,私設鉄道ながらこの大東糖業南大東事業所の砂糖運搬専用軌道は復旧し,約40年前まで全線27kmに及ぶ路線網で運行されていました。
数か所に辛うじて廃線跡のレールが残っています。
軌間762㎜の特殊狭軌です。
近年,シュガートレイン復活の計画もありましたが,現在は立ち消えになっています。「赤嶺」駅に代わる日本最南端の駅が,新たにできる可能性があったわけです。
お昼ごはんにします。
飲食店はいくつかあります。
「大東そば いちごいちえ」にて,「大東そば・大東寿司セット」を。
「大東そば」は,沖縄そばの変化系。麺の太さは,ほぼうどんと言っていいでしょう。縮れ麺でコシがあります。かつては島内で手打ちされていました。現在は本島で製麺されているようです。
そして,「大東寿司」は,八丈島の島寿司がルーツで,醤油ベースのタレに漬け込んだサワラやマグロが酢飯で握られています。ちなみに,南北大東島は八丈島からの入植民によって開拓されました。
トウモロコシは島で生産されたもので,また,デザートがコーヒーゼリーっていうのも素朴でよいです。
さて,正午前後に訪れるべきパワースポットが島北部にあるということで,急行します。
「バリバリ岩」。
名称のとおり,石灰岩の割れ目です。
現地の表示板の説明には,次のようにあります。
「南大東島は、フィリピン海プレートに乗って1年間に7cm北西方向に移動している。その証拠となるのが、バリバリ岩で岩間の下から村木ビロウがそびえ立つ秘境探検の地である。」
地理講師としての視点から言わせてもらえば,
この「バリバリ岩」の存在によって,南大東島がプレート上を移動している“証拠”とはならないと思います。
正午前後は真上から太陽光が射しこみ,ダイトウビロウの高木と相まって,確かに神々しい雰囲気の空間となっています!
引きつづき,島の北部を巡ります。
「北大東島」が見えます。
「国標」が建てられています。
南大東島には,1885年(明治18年)に沖縄県の吏員一行が上陸し,「沖縄県管轄南大東島」と明記した木柱国標を建立し,先占を行い正式に日本の領有が決まりました。
尖閣諸島も,10年後の1895年(明治28年)に同様の手続きにより,日本の領有が決まりました。
南大東島は地理的スポットが凝縮されています。
マングローブ林もあります。
大池のオヒルギ群落を見学。展望台から一望できます。
汽水域ではなく淡水の閉鎖水域にあるオヒルギ群落は珍しく,国の天然記念物に指定されています。
森林内に潜入します。
コレ,オヒルギの実のように見えますが,「胎生種子」とよばれ,もとの樹木にくっついた状態で種子が発芽したものなんです。
ある程度生長すると,水面や地面に落下して,あちらこちらへと漂った後,
定着して新しい樹木に育ちます。
この一連の繁殖過程を,オヒルギ群落のなかですべて観察することができます!
北西岸には漁船が停泊できる南大東漁港があります。
サワラやマグロなどが水揚げされているようです。
岩石海岸を削ってつくられた「掘り込み式港湾」です。
「掘り込み式港湾」といえば,大学受験地理では,北海道の苫小牧港,茨城県の鹿島港などのように,水深の浅い砂浜海岸につくられることが一般的ですので,岩礁を掘削したものがみられるのは珍しいですね。
南大東港の西港へ。
!!
ちょうどフェリーが着岸しており,運よくクレーンによる荷役作業が行われていました!
今回は残念ながら見ることができませんでしたが,ヒトの乗降も専用のゴンドラをクレーンで吊り上げて行っているようです。
島の東岸にやってきました。
南大東島の海岸は,360度すべてが石灰岩の岩礁に囲まれ砂浜がないため,海岸で遊泳する場所がないということで,岩礁を整備していくつかの人工的なプールがつくられています。
そのひとつがこの「海軍棒プール」です。1892年(明治25年)に当時の海軍が測量用に建てた棒を復元したもの(海軍棒)が近くにあることから,「海軍棒プール」とよばれています。ダイナマイトで岩礁を爆破してくり抜き,海底を整地してつくられました。
自然の海水プールなので魚も泳いでおり,シュノーケリングもできるそうです。
何といっても,直接太平洋から打ち寄せる豪快過ぎるビッグウェーブが魅力の超ワイルドなプールです。是非泳いでみたかったのですが,水着を持参していなかったこと,気温が低めであったこと,天気が下り坂で風が強まっていたことなどから断念しました。
日没後,全裸で入ることも検討しましたが,実行していれば2人諸とも太平洋の藻屑と消えたことでしょう。そうなれば,2025年度の近畿地区K塾の地理講座は,すべて全国共通の極めて味気のない映像講義と化していたことでしょう。
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
午前中,亀池港近くで見た奇妙な“二枚羽”の風力発電用風車が気になり,再び島の南岸に戻ってきました。
近づいてみると,やはり珍しい発電設備でした。
「可倒式」の風車で,写真の右側に90度倒すことができます。
台風が襲来した際にあらかじめ倒しておけば,設備が破損するのを防ぐことができます。また,メンテナンスも地上で行うことができます。なかなか画期的なアイディアですね。
夕暮れが迫ってきましたので,本日の探索はこれにて終了。
夜ごはんは,集落内の居酒屋「ちょうちん」で島料理を。
サワラとマグロの刺身,フギ(マグロの胃袋)炒め,ナワキリ(魚の名称)バター焼き,そしてなぜかおでんがウリだそうです。
離島ということで,島の商品価格は全体的にやや割高なんですが,現地で獲れる魚は“格安”,関西の相場の半分以下です。
さて,こちら,集落の中心部付近にある建物なんですが,
役場?,郵便局?,農協?
のように見えて,
パチンコ(スロット)店でした。
人口1,300人足らずの島にも,小規模とはいえ存在しているのは意外でした。
K氏は地理講師を名乗ってはいるものの,それはあくまで副業で,ここが本業の職場です。
きっちり,明日の夜メシ代を稼いでくれました。
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