業界の“良識人”からみた予備校論〈第8回〉

第8回は,「予備校講師とカネ②」です。

今回は,「講義価値の尺度としての“カネ”」に迫ります。

わたくしが研伸館予備校を辞めフリーの予備校講師になる際,先にフリーの予備校講師となって活躍されていた地学講師K氏から,予備校と契約を締結する際の最低レベルの「講義料」の金額についてアドバイスをいただきました。この最低レベルの「講義料」を支給できない予備校・塾というのは,教育機関として脆弱で,講師として仕事をするうえで何かとやりにくいことが次々と出てくる組織である場合が多いということ伺いました。

そして,フリーの予備校講師になって以降,これまで数多くの予備校・塾から出講の依頼をいただきました。契約を締結するにあたっては,こちらからの「講義料」の希望額を必ず伝えたうえで交渉し,この最低レベルの「講義料」に達しない予備校・塾と契約を締結することはありませんでした。

このことは,“カネに執着”しているのではなく,それとは真逆の考え方です。

わたくしが,今も予備校講師をつづけている理由は,〈第2回〉で述べたとおり,ほかにとくにやることがないからです。もともとお金を稼ぐことにはあまり興味がなく,ましてや生活費を稼ぐためなどではありません。したがって,ほんとうは「講義料」の金額など,ど~~~でもよいのですが,予備校講師の「講義料」というは,その講師が行う「講義の価値」を決める“評価額”であり,安く売っては絶対ダメなのです。

最低レベルの「講義料」以上の金額で契約した場合,予備校・塾側はその講師を丁寧にサポートしてくれますし,講師側も金額に見合った講義を提供しようとしますので,結果として,仕事がスムーズに進むことになります。

ところが,最近ではこのことを理解せず,予備校・塾が一方的に提示する「講義料」の金額のまま,契約を締結する講師が大勢を占めているようです。
最低レベルの「講義料」未満の金額で契約した場合,予備校・塾側も無意識ながらその講師を軽視した扱いをしますし,講師側もどこか不満をいだきながら仕事をすることになります。

地学講師K氏からこの貴重なアドバイスをいただいたおかげで,これまでさまざまな予備校・塾において,講師としての仕事を気分よくスムーズに行ってくることができました。

ただし,“黒歴史”が唯一存在します。

かつて「Z会」が「京大マスターコース」という塾を運営しており,覚えは定かではありませんが,知人の依頼かなにかの理由で,センター試験の「直前講習」のみ数年間,出講したことがあります。
教材である“予想問題”のテストが,なんと「手書きの文字」で描かれていました。平成時代だったと思いますが,「手書き」ですよ。昭和時代の終り頃でも「手書き」の問題なんてほとんどありませんでしたから。また,“予想問題”とうたいながら何年も同じ問題を使い回しており,さらに,当時の「地理B」で出題される可能性がほぼ皆無の「地図投影法(図法)」の分野の大問が掲載されていました。

これを「予想問題」だと信じて受講しているこの受験生たちは,おそらく京都大学には合格しないだろうなと思いながら,解説講義を行った記憶があります。

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